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ガーランド

Claude Debussy: Inabes inedites; Estampes

ドビュッシー「忘れられた映像」、「夢」、「ロマンティックなワルツ」、「夜想曲」、「版画」、他

アラン・プラネス

harmonia mundi
2006年録音

Debussy: Images, Estampes, Pour Le Piano - Alain Planes
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 朝霧が庭に立ちこめた。草花が霧にかすんで奇麗。窓ガラスを流れる雫が花色に染っていく。あの頃と同じように。

「なんだよ、そのカッコ」
「いいじゃない。着たかったんだから」
「あの丘を登るんだぜ。汚れるぜ。それに、そんなヒラヒラしたスカートじゃ……」
「もう時間がないよ。行こう!」

 孫娘が庭で遊んでいる。それにしても、あの娘はでんぐり返しが好きね。もう、お転婆なんだから。誰に似たのかしら?

「こんな急な丘を登れるのかな?」
「お嬢様だと思ってるだろ」
「えっ?」
「違うんだなー。お転婆なんだ」
「えーっ?」
「本当は、自分が先頭で登りたいんだ。でも、あんな服を着てるから。見えちゃうから」
「なにが?」
「もう。ぜんぶ聞こえてんだから。殺すぞ。早く登れってば!」
「はーい」

 霧が風で流れていく。海が遠くに見えはじめた。きっと霧が晴れるときの海辺の丘は幻想的でしょう。雄大な海が広がる風景が目に浮かぶ。

「霧でよく見えない」
「あっ、街だ」
「城があるぞ。けっこう近い」
「お姫様がいるんだってさ。俺、ちょっと見てくる」
「バカ、やめろ。危ない」
「大丈夫だって」
「ダメだ。遠くに白波が立ってる」
「ちょっとだけだ」
「やめなさい。お姫様なら、ここにいるじゃない」
「えっ?」
「なんて?」
「ごめん。言い過ぎた」
「いーひっひ。お転婆娘が、お姫様だって。あーはっは」
「だからごめん。笑うな」
「あっ、どこへ行くんだよ? あーあ、ほら、怒っちゃった」

 海辺の丘には、クローバーの花が白い絨毯のように咲いていた。西風に揺れるクローバーの花は、まるで妖精たちが踊っているように思えて、自分が童話のお姫様になったような気分だった。

「クローバーの花を集めよう」
「なんで?」
「冠を作ってやるんだ。お転婆なお姫様にね」
「うわっ。そんな顔してロマンチスト」
「顔は関係ないだろ。恥ずかしいから、お前が渡してくれよな」

 ずいぶん長い間、あの丘には登っていない。まだ、あの丘に登れるかしら?

「どこへ行ってたんだよ?」
「ちょっとね」
「はい、お姫様。どうぞ」
「えっ? どうしたのこれ」
「あいつが作ったんだぜ。あんな顔して」
「だから、顔は関係ないだろ」
「あはは。へぇー、ありがとう」

 私たちは古に栄えた王族の末裔。王族には一人の美しい王女がいた。王女は一人、国を離れ、海辺に建設した街で享楽の限りを尽くした。怒った神は罪深き王女と共に街を海に沈めてしまった。そう、あの街。だから、あの街を見ると、私たちは不思議な夢を見るんだって。あの時、未来の私が見えた……気がした……。

「どっちと結婚する? 俺か? 奴か? それとも……」
「教えなーい。あー、ずっと、ここにいたいなー。でも、もう帰らなくちゃ」
「そうだな。もう帰ろう」
「もし、もう一度、あの街が現れるなら、また一緒に見ような」
「二度見られるなんて奇跡だ。でも、その時は、きっと、おじいちゃんとおばあちゃんになってるよ」
「きっとそうね」

 あの日に語り合った事が現実になった。千五百年の時を越え、忘れ去られた王国の、途絶えた王位の継承者に私がなる。孫娘は嬉しいかもしれない。だけど、私にとってはどうでもいいこと。だってもう、私の頭には冠が載っている。さあ、行きましょう。みんなが待っている、あの丘へ。