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高層ビルが建ち並ぶ大都会。若い男女がビルの屋上にいる。男の名はミライ。彼は通信関連企業に勤めている技術者。女の名はアイ。彼女は商事会社に勤めているOL。二人は幼なじみ。
「どうしたのミライ? 呼び出したりして」
「やあ、アイ。最近どうよ?」
「最悪。彼と別れた。悲しみのズンドコ。いっそ巨大な彗星が地球に落ちて」
「来た!」
「キャー!」
「ごめん。メールだ」
「誰から?」
「君の知らない女の子」
「女の子? ウソ。ミライに彼女が出来たの?」
「違うよ」
「なに照れてんのよ。信じられない。ビックリするぐらい女子から嫌われているのに。見かけはちょっとイイ男なんだけどねー」
「……」
「で、何だって?」
「えっ?」
「メール。彼女から届いたんでしょ」
「ああメールね。もうすぐ彼女が来るんだ」
「来るってどこから?」
「それが日本の子じゃないんだ」
「えっ、アメリカ人? フランス人? それともトリニダード・ドバゴ人?」
「なんていうかなー。地球の子じゃないんだ」
「もしもし?」
「いわゆる宇宙人」
「そうよね。宇宙は果てしなく広いわ。宇宙人がいてもおかしくないわ」
「ウソだと思ってるだろう」
「当然」
「俺の目を見ろ。これがウソを言ってる目か?」
「キラキラしているのが気持ち悪い。そして近くに病院がある」
「あっ!そうだ!」
ミライはぶつぶつ言いながら携帯電話を操作しはじめた。アイが携帯電話の画面を覗き込む。
「何をしているのかな?」
「彼女に俺の位置を知らせる」
「カーナビみたいに?」
「速度と加速度も必要だ」
「ドライブ・デートでしょ。彼女は車酔いしちゃうのかな?」
「俺たちゃ地球と一緒に回ってる。地球は太陽を回ってる。太陽だって銀河を回ってる。みんな一緒にぐーるぐる」
「何を訳の分からんこと言っている。コラ、ちゃんと彼女の説明をしなさい!」
「だから宇宙人。ウルサイな」
「ウルサイってなによ。大事な話があるって言うから来てやったんじゃない!」
p=e+Ru
p′=e′+(Ru)′=e′+Ru′+R′u=e′+Ru′+ω×Ru
p″=e″+(Ru′)′+(ω×Ru)′
(Ru′)′
=Ru″+R′u′=Ru″+ω×Ru′
(ω×Ru)′
=ω′×Ru+ω×(Ru)′
=ω′×Ru+ω×(R′u+Ru′)
=ω′×Ru+ω×R′u+ω×Ru′
=ω′×Ru+ω×(ω×Ru)+ω×Ru′
p″=e″+Ru″+ω×(ω×Ru)+ω′×Ru+2ω×Ru′
「出来た。送信。見る?」
「見ない。そんな数式を見てたら目が回る」
「この美しさが分からんとは。数学は宇宙を語るワンダホーな言葉だというのに」
「本当にあなたって昔から不思議な男よね。今度は宇宙人?」
「だって本当なんだ」
「そんなに言うなら証拠は?」
「彼女の画像がある」
「見せて。8本足? ガマガエルのお化け? 宇宙人はどんな姿をしているのかな」
「ほら」
「カワイイー、ってあのね。コスプレしてる地球の女の子じゃない」
「見かけはね。ただ」
「ただ、なに?」
「彼女は地球に長くいられない」
「は?」
「目が回る。地球の自転速度が早すぎるらしい」
「はぁ? もういい。帰る。だいたい携帯に宇宙人からメールなんて来ない!」
「かの有名な三軒茶屋博士が重力波を使う画期的な通信方法を開発…」
「あっそ。バイバイ」
「わっ、待ってくれ。もう時間がないんだ。君を…」
「キャー、手を離して。そんな作り話、私が信じると思ったの? もしかして、私がカワイイ宇宙人に嫉妬するとでも思った? バカじゃないの。そりゃあ、あなたが嫌いじゃないから一緒に遊んだりもするけど。だからって勘違いしないで。こんなことするから女子に嫌われるの。気持ち悪いの。あ・な・た・は」
謎の飛行物体が、水平線の向こう側から物凄いスピードで現れて、二人の頭上で停止する。
「キャー、手を離さないで!」
「救いたい」
「お願いします」
「危ないんだ」
「おっしゃる通り」
「ん? なんか違うな。まあいいや。この宇宙と隣の宇宙が接触したんだ。その衝撃波が通過する11次元の座標の上に俺たち二人がいる。このままだと、二人とも跡形も無く消える」
「なんですか? じゃあ、あのブヨブヨと蠢くおぞましい姿をしたアレはなんですかー?」
「彼女がアレに乗っている。宇宙船さ。アレに乗せてもらって、衝撃波が通り過ぎるまで、時空を少し移動するんだ。気持ち悪い俺と一緒に行こう」
「えっ、ちょっと待って。考えさせて。なんか気まずい。んーっと。えーっと。ああ、目が回る!」
「おい、しっかりしろ。早くしないと彼女も目を回しちゃうぞ。さっき言ったじゃん!」
「ねえ、彼女と恋人なんでしょ。彼女とケンカになるの嫌よ。絶対に嫌だからね。約束して。メイク道具だって持ってないんだから!」
「なにその心配? 彼女が恋人だなんて一言も言っていない!」
「そうだっけ? じゃあ行くー!」
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