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> おい、そこの娘。
> なんですか?
> 我は神。天上より舞い降りた。
> 添乗? ああ、おもしろツアーのガイドさん。
> 違う。天ぷらの天に、特上の上。天上だ!
> 美味しそう。キャンペーンか何か?
> 違う。話の一部分だけに反応するな。この翼を見よ。これで舞い降りたのだ。
> うわっ、凄い。私がSF映画のヒロインに?
> 違う。こんなスカウトはおらぬであろう? この弓矢を見よ。これで心を射止めるのだ。
> どわっ。私のキンキラのバッグより奇麗。まさかナンパ? 私、お金に目がくらんだりしません。
> 少し近づいたが、ぜんぜん違う。この頭上の輪を見よ。これを見れば分かるな?
> わぉ、宙に浮いてる。あっ、分かった!
> ようやく納得してくれたか。
> マジシャンでしょ。私を騙そうとしてもダメなんだから。
> ……。
>> あーあ。お嬢ちゃん、彼氏を泣かしちゃったのかなー。ダメだぞー。
> そんなに落ち込まなくても。
> 落ち込んではおらん。呆れておるのだ。まったく近頃の娘ときたら……。
>> あれー? おぅ、あんちゃん、天使だろ。若い頃に見たなー。久しぶりだなー。今でも酔っぱらうと見えるんだなー。
> えっ? それじゃあ、本物?
> おぬしには恋い焦がれる男がおるな?
> 別にー。
> ウソをつくな。
> ウソなんてついてませんーっ。
>> そうでーす。おいっ、天使のあんちゃん。俺を無視すんな!
> 勘弁してくれ。おぬしの恋を叶えるために舞い降りたのだぞ。使命を全うせねば帰れぬ。誰かおるのであろう?
> えー、暫く、恋人はいなくてもいいかなー。
>> そうでーす。おいっ、俺を覚えてねーのか。悔しいから踊っちゃうぞ!
> 娘は恋をするものだ。
> そうやって決めつけるのは良くないと思いまーす。
> そんなつんつるてんの服を着て言っても説得力がない。
> あっ、あなたが私の恋人になってよ!
>> おっ、お嬢ちゃん、冴えてんな!
> バカを言うな。この際、誰でも良いから言え!
> だからー、あなたがいいの。
>> そうだよなー。この天使のあんちゃん、カッコイイもんなー。
> 自分には矢を放てぬ。
> 私が矢を放ってあげる。
>> おっ、ますます冴えてんな!
> そういうことじゃない。
> やらせて、やらせて。天使が恋人だなんて最高!
>> おじさんも混ぜてくれー!
> おぬしらなー。我はキューピッドだ。こらっ、手を離せ!
> もーっ、天使もキューピッドも一緒じゃない。あなたが恋人になったら、世界征服の夢が叶うかも。
> 恐ろしい娘だ。神であると知られたからには、人間に恋はできぬ。
> あー、私の心を弄んだのね。ヒドイ!
>> おじさんの乙女心も踏みにじったのね。がっはっは!
> うーん、らちがあかぬ。相手を間違えたのかもしれんな。一旦、天上へ戻るか……。
> ちょっと待って!
> さらばだ。
> あっ、それじゃあ、このおじさまがいい。
> な、何? このぐでんぐでんに酔っぱらって、頭にネクタイを巻いて、千鳥足で管を巻いておる、だらしないオヤジにか? おぬしは、このオヤジと恋をするのだぞ?
> そうよ。文句ある?
>> 特に無し!
> 本当に良いのか? どうなっても知らぬぞ。よし、分かった。どりゃ!
> おじさまー!
> どうした、お嬢ちゃん?
> 実はぁー、お財布を忘れちゃってぇー、帰りの電車賃がないのぉー。1000円でイイんですけどぉー。お金を貸してもらえますぅー?
>> そんなことのために矢を使ったのか?
> どうしようかなー。おじさんとキスしてくれたら貸してあげるんだけどなー。なーんてな。はいよ、1000円。
> おじさまー。アドレス交換してもいいですかぁー? お金を返したいのぉー。
> 金はやるよ。
> ダメですぅー。お金は返しますぅー。
> えーっと、名刺はどこだっけなー。おっ、あった。はいよ。
> どぇーっ。社長さんなんですかぁー? 一流企業じゃないですかぁー!
>> はっ、あいつ、あの時の!
> 今度うちの会社に遊びにおいで。お嬢ちゃんたち向けの商品を考えてんだけど、良いアイデアが無くてなー。意見を聞かせてくれよ。お嬢ちゃん、冴えてるからな。
> イクイクー!
> 土曜日の昼なら俺いるぞ。一緒に飯でも食うか? そうしたら、おじさんイイこと教えちゃうぞぉー。だーっはっは。
> イャッター。約束だぞぉー。忘れちゃダメだぞぉー!
> おぅ、待ってるからなー!
> ハーイ、バイバーイ!
>> 偶然か? それとも?
> 天使さーん。あれっ? さっきまでいたのに。お祈りしたら、また会えるかな?
>> だから、我はキュー……まあ、どちらでも良い。祈れ。夢を追い続けるのは苦しい。我の翼は、おぬし心の中に止めどなく零れ落ちる涙を、天上へ舞い上げ、悲しみと共に消し去ることができる。娘よ、また会おう。
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